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6)電力グループ
 現代のフィールドワークでは、その分野を問わず情報記録などのために相当量の電力を使用する。それはGPSでありデジタルスチルカメラやビデオレコーダーでの撮影、録音装置での記録、コンピュータの運用などであるが、これらは相応の電力を消費する。

フィールドワークと対災害準備では必要な電力も保存期間も全く異なるため、共用で解説はできないが、この問題を考えるとき、日ごろどれだけ商用電力の供給に依存しているか思い知らされる。重量2Kg程度、500ccの安価で安定な燃料で、300Wの電力を3時間程度供給できるようなアイテムが登場すれば素敵なのだが。

 現実的には充電式のバッテリーを充電して備える・・のだが、バッテリーの形式によって扱いが異なる。
 
 身近にある電力備蓄が可能なバッテリー(正確には2次電池)は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン(リチウムポリマー)電池がある。

 

 ○鉛蓄電池
 比較的規模の大きい録音、撮影などのフィールドワークで使用される。これは蓄電電力あたりのコストが低く、比較的重負荷に耐えられるからだ。コストが低いのは大量に消費されている自動車用の製品であるが、それなりに問題も大きい。メンテナンス:バッテリーのコンディションは、古くから電解液(希硫酸)の比重で管理される。(詳しくは専門書に譲る)

 DC-ACコンバータを用いてAC100Vを供給したり、タングステンフィラメントのライトも使用できるので、映画のロケなどでも使用されることが多い。希硫酸を電解液に使用し、安価なものでは転倒や傾けると漏液することが多いが、この電解液は肉体にダメージを与え、自動車の床を腐らせ、多くのものを腐食する。

 放電しきった状態(過放電)は致命的で、そのため電解液の比重や電圧などをまめに管理しなければならない上、使用率が低すぎてもサルフェーションなどの不活性状態に陥る。安全に使用するには専門書の一冊くらいは読破する必要があるだろう。

 

 ○ニッケル水素電池
 三洋電機製の「エネループ」以前と、その登場以降では、この電池の評価は全く異なる。エネループ以前の物は非常に激しい自己放電があり、満充電後に全く使用していない状態であっても、数週間後には残存容量はほとんど無いというほどのひどさで、使用する直前に充電する必要があった。

また、メモリー効果という問題もある。これは残存容量があるうちに、補充電(追加充電)すると、その「使い切らない」ことがメモリーされ、見かけ上蓄電容量が減ってしまうというものだ。このため、残存容量があっても、充電前に「放電器」なるもので残っている電力を破棄しなければならないほどだった。また低温環境での使用も厳しい。

 エネループはこれらの問題をほぼ解決した製品で、初代エネループで1年貯蔵時に残存容量は80%以上という(現在のモデルは約3倍に向上)画期的なもので、これにより使い捨ての電池の必要性は大幅に圧縮されたと言える。現在でも他社の追随を許さない。

 メモリー効果は全く無くなったわけではないが、最大で全容量の30%程度に抑制されているようだ。低温動作もそれまでのニッケル水素と比べると画期的と言える。

 しかしその性能を十分に生かすためには、いくつか条件があるようだ。充電器は最大4本同時に充電できるものが多いが、1本1本個別に充電状態を管理するタイプの充電器を使用する必要がある。4本同時に充電できるタイプのいくつかは、2本ずつ直列に「組み充電」しているものがあるが、このタイプの充電器では、使用するうちにバッテリー個々のばらつきが次第に拡大し、結果的に使用時間やバッテリーの寿命を短縮することがある。充電に個別充電のものを用いることと使用用途ごとに、バッテリーひとつひとつに識別記号や番号を記入し、組で管理(同じ用途に使用するように)することで、寿命や使用時間を伸ばすことができる。

 過放電には比較的強い傾向があるが、複数の電池を直列にして使用する場合、必ず電池の疲労状態の揃ったものを組み、しかも終止電圧を厳守する必要がある。電池がばらついていると、早く無くなった電池に、他の電池が+-逆方向に充電してしまうが、この逆充電が起こると電池は大きなダメージを受け、漏液や、異常発熱、電極の内部短絡など、復帰不能の状態になることがあるので十分に注意しなければならない。

 また充電中や放電中(使用中)に異常に温度が高くなるものはダメージを受けていることがあるので、注意する必要がある。ときどき触ってみよう。

  備蓄は満充電状態で、低湿度、低室温(0~25度程度)を目標に、プラスティックス製のケース(ショートなどを避ける目的で)に入れておく。トリクル充電は避ける。年1回程度補充電を行う。

 

 ○リチウムイオン(リチウムポリマー)電池
 現代を代表する高性能(軽くて高容量で、メモリー効果のない)だが、使い方を間違うと容易に爆発する危険性がある。
「LEDライト考」に記述があるので参照ください。その内容と重複するが、絶対に避けなければならないことを列記すると

1)2Cを超える充放電
2)発熱するような運用
3)バッテリー自身の膨満 <内圧が上がっていることは見ればわかるでしょう>
4)ショート       <瞬間的でも致命的>(外装フィルムの破れも危険)
5)過放電    [<2.75v] <一度で致命的>
6)過電圧の印加 [>4.2v] <爆発まで秒読み>
7)高温の印加(ハンダ付けなど)<自殺行為>
8)衝撃の印加         <穴が開くと飛んでいきます>

 のようになる。

  備蓄がなかなか難しく、50~60%の充電量(それ以上は逆に保存寿命を短縮し、それ以下では保存中に過放電になるリスクが増大)で、低湿度低室温で、1年に1度、15%程度補充電を行う。

 とくに困るのがPCなどの組接続されているバッテリーパックで、このパックには3直列または4直列(並列使用されている場合もある)の構造になっているが、それぞれのセルがばらついてくることだ。

 寿命は総充電量で決まるようで、300容量~700容量程度のようだ。ノートパソコンに常時セットしている状態では、充電量100%、OFF中にもそれなりに電流消費しているので、浅い充放電を繰り返し(トリクル状態で)3年程度でその総充電量に達するようだ。
使用していない時や、家庭内で使用している場合(ACケーブルを足で引っ掛けない安全なところと言う意味)には、バッテリーは取り外していた方がよさそうだ。

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