○使用・目的

SPDIF出力を備えた再生装置やインターフェースなどの、アナログ出力のアップグレード
モニター系やマスタリング再生系の安定化
高音品位(まっとうな24ビット解像度)
再現性の確保と製作の容易化
チップ以外の部品調達性

○製作背景
 筆者は70年代後期より音楽作品の制作活動を行っているが、作品品位に関わるデバイスの学習や理解に留まらず、他との差別化の要であるものについては、積極的に開発やその制作実務への応用を行ってきた。
 
 デジタルオーディオに関して、その品位を支配しているものの一つがアナログからデジタルへの変換(ADC)とデジタルからアナログへの変換で(といってもそれらが全てではない)あることはよく知られている。当初はアンチエリアッシング→サンプル/ホールド→変換と個別に作る必要があり、それなりに必要部品点数や回路デザインが複雑であったものが、現在ではそれらをまとめて1チップ化され、ADコンバータとして流通している。電源供給も当初は4電源必要で、クロック関係も最低3種の同期したものが必要だった。
 
 アナログ時代、腕に覚えのある多くのサウンド・デベロッパー達は、より高い品位を求め、様々な工夫や機材の製作を行ってきたものだが、デジタルに至り、いきなりAD/DAコンバータでつまずいてしまい、苦渋を飲んだ者たちが如何に多かったことか・・。筆者も同様にメーカー製品と同等かそれ以上のものはなかなか実現できず、四苦八苦していた時期が随分続いていたように思う。

困難の要点をまとめてみよう
 品位以前に、電源のややこしさ(正確には起動順序も・・)、クロックの面倒さ、さらには何をどうすれば希望の品質になるのかがわからない不透明さがある。

 つくりやすさ 
本機で採用するAL1101(ADC)、AL1201(DAC)に関して開発秘話などの情報を筆者は持ち合わせないが、上記のような面倒な手続きの一切が無い。
○単一電源:現在の多くのコーデックが単一5Vや単一3.3V系で動作する。
○単一クロック:現在でも多くのコンバータでは複数クロックを必要とすることが普通だが、AL1101、AL1201では単一のワードク ロックのみで動作する。ビルダーは正確かつ低ジッターで美しいワードクロックに専念すればよいのだ。
○低雑音、高安定性が可能な、バランス出力
○周辺部品レイアウトしやすいピンコネクションとパッケージ
など
 まるで個人ビルダーをターゲットにしたかのような作りやすさだ。ワークショップなどで多くの製作(入門者を多く含む)に立ち会ってきたが、大変再現性が良好で、そのわりに高い品質が確保できるという特徴がある。

 主観評価
 DAWユーザーや、オーディオマニア諸氏の発言に、やっぱり96KHzサンプリングでなければ・・という苦言をしばしば耳にするし、筆者も44.1KHzや48KHzサンプリングを呪うことが、以前にはしばしばあった。また、実際に44.1KHzのソースをレート変換し96KHzで再生する方法なども行われているようだ。
 そのような「ヌケ」や「広帯域感」を目指している方には、最良と思う。前後の回路構成にも影響を受けるが、一般的な商業ベースのソースを取り扱う(マスタリングなどで)には、十分な帯域感とヌケを持っている(主観評価的に)が、無論、帯域そのものは理論値そのものです。
 また、16ビットの古い資産(旧世代デジタルで作成されたCDやオリジナル録音物)の有効利用にも活用できる。DATの時代にSBM(スーパー・ビット・マッピング:ノイズシェーピングの一種)で録音したものなどでは、人の衣擦れの音や靴底と地面の擦れる音が過剰に聴こえ、そのことがデジタルな印象を強めた(何とも曖昧な言い方だ)。このサリサリ音は位相歪と量子化ノイズの合わさったものだが、とくに低いレベルで激しく生じる。ところが、AL1201(ADC)による再生では、このサリサリが非常に少なく、本来あるべき随伴騒音のレベルに落ち着く。一言で言えば、大変「静かな」印象だ。静かな印象とともに、旧来見られがちな、高域限界付近にある位相特性のうねり(あくまで主観的)が大変少なく、このことが帯域感の拡大に寄与しているようだ。

 客観評価
 データシートにあるような特性がそのまま得られる。データシートにあるように位相平坦型(帯域には暴れが出る)で、ダイナミックレンジも実測で110dB程度が限界のようだ。しかし高特性を得ることが目的ではないし、コントロールできるパラメータが多いので、聴感覚的な最適化は容易なチップの一つといえる。

 応用
 プラグイン真っ只中の昨今だが、実機アウトボードの音を何とかしたいと思っている方は多いと思う。AL1101、AL1201の特徴の一つは簡単なクロックワークにあるが、多くのアウトボード実機(内部デジタルがシリアルI2Sに限られるが)では、容易にコンバータの換装ができる。ワードクロックを用いないコンバータなど存在しないからだ。詳しくは本稿では触れないが、多くのCDライターのAD、DAコンバータは今ひとつな品位であったりするが、これらも外付けあるいはコンバータの換装で、容易にアップグレードできる。

回路解説
 解説することはあまり無い。
TOS-LINK(光コネクタ)TORX176で受信した信号を、SPDIFレシーバーCS8412で復調(コンポジット→セパレート)し、ワードクロックとデータに分離し、DAコンバータAL1201でDA変換しているだけだ。AL1201はデジタル・アンチエリアシングフィルターを内蔵しているが、外付けで2~3次のフィルターの併用が必要だが(無いと高次のスプリアスが現れる)、環境によっては無くても問題は無いだろう。AL1201は平衡出力を持ち、同位相で現れるスプリアスやクロックの漏れを効果的に低減できる。
 このためAL1201のバランス出力は、バランス受け兼用のスプリアスフィルタ回路で受けるが、このような機能(コンバータの後始末あるいは環境を整える働きに対して)コンディショニング・アンプと呼ぶ。
作例の回路はデータシートの回路そのままだが、カットオフをもう少し高くとる方が良いケースもあるだろう。また、バランス受け、スプリアスフィルタ、出力アンプを兼用しているため、丁寧にはそれらの機能をちゃんと一つ一つこなした方が品位は上がるが、公開は作例のみとさせていただきます。できればインストゥルメンション構成で、バランス受けとスプリアスフィルタを、送出用には出力強化したステージを追加すべきだろう。
 OPampにモトローラ社製MC33078を採用しているが、筆者の主観評価としての選択できめたものであり、このままの定数で多くのOPampに差し替え可能である。OPampの電源は、最低±12vとしていただきたい。図面では省略しているが、OPampの電源端子(#4、#8)とアース間へのパスコン(0.1μF程度)、各チップへのパスコン挿入を忘れないように。

製作解説
 CS8412(CS8414可)とTOS-LINKとの配線はなるべく短くなるようにレイアウト工夫を行う。これらをモジュール化することも効果的です。作例(ワークショップ用)ではコアキシャル入力は装備していません。DAコンバータの配線だが、作例のように4つのパスコンを1mmでも短く、集中したアースに一括接続するように配線する。普通にSMD配置するよりも作例のようなシールドとグランドプレーンを合わせたような配線は、それなりに効果が期待できる。AL1201はSMD16ピンだが、20ピンの基板を用意し余りのパターンを利用しグランド用銅板(0.1mm~0.15mm)を固定し、AL1201を包み込むように被せ、そこへパスコンのアースを持ってくる。AL1201 の重要アース配線(#3、#5、#11、#12)もこの銅板に直接最短で接続する。
それ以外のグランド行き(#8、#10)はそれぞれ、入力のビット幅設定(32bit/24bit :作例では32bit・・・単にチップ間の通信ビット冗長なので32bit深度と言う意味ではない)と、エンファシスの有無(作例では無)の設定で、それほど「最短」を意識する必要はないし、必要ならスイッチで切り替えても良い。もしもDAコンバータとしての出力レベル調整を設けたり、ある種のゲインリダクション機能としてレベル変調を行う場合は、4番ピンを使用する。詳細は本稿では扱わない。13番ピン(アナログ電源)のみローカルレギュレータを用いているが、面倒な場合はそのまま5vへ接続してもあまり問題は生じないだろう。
 作例ではアナログ電源回路にDC-DCコンバータを用い、単一5v~6vのバッテリー動作が可能なように作っている。この作例はワークショップで「作例」として各ブロックを手にとって観察できるようにしたものだが、こんな状態であっても十分な性能を発揮できる。

注意! 参考までにCS8416をSPDIF受信インターフェースとした回路例も添付しますが、こちらは十分に特性や再現性を把握できていません。一層の自己責任にてご利用下さい

*AL1201を読者プレゼントします。詳しくは当サイトインフォメーションを参照下さい。