トランスポートとトラック・レベル表示                         (C)Y.Utsunomia 2008-2010 ☆トランスポート・コントロール audacity ではエディターとしての能率向上のため、多くの再生モードといくつかの 録音モードを持つ 再生系 ・トランスポートボタンによる再生------最初から最後までの通常再生                    カーソルからの再生                    ループ再生 ・時間軸尺のクリックによる即席再生----指定位置からの再生                    ループ再生 ・可変速再生ボタンによる再生----------最初から最後までの可変速再生                   カーソルからの可変速再生                   ループ可変速再生 録音系 ・トランスポートボタンによる録音 ・時限動作による録音 ・入力レベルによる自動録音   多くのDigital Audio Workstation の操作画面がそうであるように、audacityの 場合もテープデッキのトランスポート・コントロールと同様の操作ボタンを持つ。 標準的な配置では左から、 「データ開始点へのジャンプ」(ヘッドへの巻き戻し)、 「再生」、 「録音」、 「一時停止」(ポーズ)、 「停止」、 「終端へのジャンプ」(テールへの早送り) のように並べられている。 しかし「編集」→「設定」にある「インタフェイス」の「ボタンを人間工学的順序」 に設定すると 「一時停止」 「再生」 「停止」 「データ開始点へのジャンプ」 「終端へのジャンプ」 「録音」 の順に並べ替えられる。 ○「シフト+再生」(ループ再生)と「中途からの即席再生」 しかし、古典的に見える操作パネルはいくつかの機能が隠されている。 例えば再生ボタンは、シフト・キーを押さえながら操作すると、選択範囲のループ再生 として機能するし、ボタンの形ではないものの、波形表示部分の上にある時間尺が表示 されている部分で左クリックすると、そこからの即席再生となる。  この機能は大変便利で、長時間の録音物などの内容を確認したりする場合に、聴きた い部分に直接ジャンプし、そのまま再生する機能である。 これも多重に機能が割り付けてあり、時間尺の上で左クリックしながらドラッグすると、 ドラッグした範囲の部分再生になる。(一度再生すると取り消される) この機能は、あくまで確認作業のような簡易再生機能の一種のようである。 一度再生されると時間尺上のマークは消失するし、正確な指定も困難である。 (注意、「中途からの即席再生」はver,1.3.x以降で有効な機能で、ver,1.2.xでは無効) 一般的な「ロケート」に相当する機能は「編集」の項でも解説したように、「ラベル」 がこれに相当する。正しくは即席再生と時間軸ズームを使用しながら、正確なラベル位 置を確定し・・・・とりあえず大まかにラベルを打った後、ラベルをずらせて調整する。 ラベルをずらせるには、ラベルトラックの「その位置」の丸印部分を左クリックで掴み ドラッグする。一箇所に打ったポイントラベルであっても、ドラッグすると範囲指定の ラベルに変化する。 注意)時間尺上のクリックと波形表示窓でのクリックでは意味が異なることに注意。 とくに6っつの基本ツールとの関連性を正しく理解しなければならない。 時間尺上のクリック(中途からの即席再生)では、どのツールを選んでいる場合でも、 常に「中途からの即席再生」となるが、波形表示窓上でのクリックでは、各ツールの機 能が発動する。また、どのツールであっても、波形表示枠にポインタがかかっている場 合は、枠の大きさの調整となる。 ○可変速再生ボタンによる再生(ver,1.3.x) 通常のトランスポートボタンではなく、デフォルトのレイアウトでは右側か下段に ある、やや小ぶりの再生ボタン(再生速度のスライダーとセットになった)があるが、 この再生ボタンは簡易可変速再生するためのスイッチである。  なぜ簡易であるかは使用すればわかるが、可変した状態の再生音を簡易に確かめるよ うな使い方しか現状ではできないからで、このモードでは録音も不可で再生音品質も低 い上に再生しながらのスライダー調整も不能だからだ。  この可変速再生ボタンを使用しなくても、audacityは自由に再生速度を可変できるが、 (詳しくは「サンプリング周波数、1と2」を参照)そのためには各トラックの左側に ある各トラック個別の設定メニューを開き、それぞれのサンプリング周波数を設定変更 する必要がある。またその設定のためには、サンプリング周波数と音程との関係を計算 できなければならないし、使用するすべてのトラックについて設定しなければならない。  この可変速再生ボタンとスライダーを用いると、全てのトラックについて、同時に、 また速度倍数(もとの速度を1.00倍として、範囲は0.01倍から3.00倍)で指定すること ができる。  ここで得られた結果をもとにサンプリング周波数の数値に換算し、必要なトラックに 入力すると、効果を確定できるのである。計算は、もとのサンプリング周波数に、この 倍数を掛ければよいだけだ。  ちなみにこのスライダーもツマミ上で左ダブルクリックすると、数値入力可能な詳細 設定画面が開く。 録音系にもいくつかのモードがある。(ver,1.3.x) 項の冒頭に記したように、時限動作による録音、入力されたレベルが一定以上になった とき自動的に録音を開始し、一定以下になると録音を停止する機能がある。いわゆる、 留守録やロガーとしての機能があるわけだ。これらの設定は「録音と再生」のプルダウ ンメニューや「編集」→「設定」→「賢い録音」で行うが、これらの動作を行わせるに は、無論PCが起動していなければならない。  またこの2つの録音モードは併用することができる。 ☆ トラックレベル表示 多くのDAWソフトでは、各トラックの横や画面のどこかに、各トラックのレベルを表示す るレベルメータがあり、このネオンサインのような表示が使用者の満足感をくすぐるよ うだ。 audacityではレベルメータらしきものは、トータルの出力レベルメータと、録音レベル を表示するメータがあるのみで、しかも多くのトラックを開き負荷が重くなってくると 引きつり(更新回数が減少)、さらにまったく動かなくなってしまう。  筆者はノートPCを各種の表示装置として、様々な現場に持ち込んで使用しているが、 現在のマシンパワー(クロック1〜2GHz)では、スペクトラム、リサージュ、いくつかの 「正確なレベルメーター」を表示すると、マシンパワーは使いきってしまう。現在の技 術水準とはその程度のものかもしれないし、逆に言えば優秀なメータは高価で偉大なわ けだ。 ちなみにaudacityではメータ表示に「カッコよさ」は求められていないし、マシンの処 理能力の余裕度の表示を兼用しているとも言える。また、表示はおおむね正確である。  逆に多くのDAWソフトでは、非常に不正確で、本来のメータの存在意味とは異なるとこ ろで機能しているようである。 audacityには様々な用途に向けての工夫が見られるが、各トラックのレベルについての メータが無いこともそのひとつである。(master fader が無いことと並んで)  スタート時には普通の「波形表示」であるが、audacityでは波形表示枠の左側のレベ ル尺表示窓の中をクリック、あるいはドラッグすることにより、様々な情報を引き出す ことができるように工夫されている。 (ver,1.3.8以降では「ビュー(表示)」→「ミキサーボード」で、一般のDAWに装備され ているような、トラックレベルメーターと大型のフェーダーが装備された。このメータ ーは、トラックゲインスライダー(=大型フェーダー)よりも後、エンベロープツール より前のレベルを表示する) ○通常波形表示(リニア) 一般的な波形編集ソフトと同じように見えるが、一般的DAWよりも丁寧に波形が描かれて いる。丁寧とは、すべての音データを読み込み(いくつかのソフトでは端折って描画す るため、ピークを見逃したりレベル把握ができないものも)ピークレベルと実効値(相 当)を色分け表示している。濃い青色の上端がピークレベルで、薄い青色の上端が実効 値(あるいはVU表示と読み替えても可か)である。もしクリップレベルに達した部分に 注意したい場合は、「ビュー」→「クリッピングを表示」でクリップ部分を赤く表示で きる。 丁寧な読み込みのため、波形表示にはやや時間がかかるようだ。 ○対数圧縮波形レベル表示 各サンプルを対数圧縮し波形表示するモードである。 色分けは上記の「通常波形表示」と同じだが、縦軸が対数圧縮されているため、波形の 上端はメータの振れ(レベル表示)と意味が近ずく。また、どれくらいのスパンで表示 するかは設定が可能で、「編集」→「設定」→「インタフェイス」で、その最小値を -36,-48,-60,-96,-120,-145(単位はdB)に設定できる。またこの設定値は同時にエンベロ ープ・ツールの書き込み最小値にも反映する。  別項にも記したが、この最小値は自分が今取り扱っているサウンドの品質や音楽の分 野によって適切に設定しなければならない。CDのための操作であるなら、-96dBよりも小 さい数値(-120dBや-145dB)を設定しても無意味であるし、より広大なダイナミックレ ンジを要求するなら、-36dBや-48dBでは絞りきることができなくなる。ポップス目的な ら-36dBか-48dBに設定し、絞りきりを必要とする部分ではフェードイン・フェードアウ トコマンドを併用することが妥当であろう。 *レベル表示尺の操作 どうしても上下対称な波形表示ではレベルに見えない人のために、audacityでは便利な 表示変更ができるように工夫されている。 波形表示窓の左端のレベル尺表示窓の0位置で左クリックしたまま枠の上端までドラッグ してみよう。すると波形表示は0から上だけになり、そのままレベルの変化に見えてく るではないか。 この状態での「エンベロープ・ツール」での書き込みは大変快適だ。 次のバージョンでは、この表示モードに一発チェンジできるスイッチを装備して欲しい ものだ。 レベル表示尺枠の中で左クリックすると、表示レベルのズーム・アップになるが、なれ ないうちはなかなか思い通りの尺にならないかもしれない。操作に失敗し表示が「気持 ち悪い」場合は、この枠の中で右クリックをするとズーム・ダウンする。慣れないうち に左クリックしてしまい、わけがわからないスケールにしてしまった場合は、とりあえ ず変化しなくなるまで右クリック連打し、(その変化しなくなった表示モードが、オー バースケール・モード)さらに一回左クリックすると通常の表示スケールになる。