リング・モジュレーション                         (C)Y.Utsunomia 2008-2010 フォント:Fixed sysやMSゴシック、MS明朝などでご利用下さい。      半角、全角のスペース表現が正常化します。 図版は「EQ」フォルダに同梱  比較的古くから音楽でエフェクトとして用いられている変調加工の形式で、 Audacityの場合、LADSPAプラグインパックに2種含まれている。  もともとは無線通信の技術で、正確には「平衡変調」あるいは「Double Balansed Modulation」と呼ばれるが、古くはその変調に用いる回路がダイオードを環状に接続 した回路であったため、リング〜の名があるらしい。  変調なので、音声入力とキャリア入力があり、その両方に入力がなければ出力は 得られない。 ┌────┐ 音声信号入力──┤Ring ├──出力 (被変調音) │modulate│ └──┬─┘ キャリア ─────┘ (変調音)  得られる出力スペクトラムは極めて特徴的で、キャリアと音声入力の 和と差のスペクトルが、キャリア周波数を中心として、高い方にも低い方にもシン メトリー(リニアスケール)にあらわれる。 アナログシンセサイザーの多くにも搭載され、鐘などの金属打楽器系の音を合成する のに使用する、と説明された。Y社DXシリーズはFM変調を基本アルゴリズムとしては いたが、事実上このリングモジュレーションが現れるため、イレギュラーなピッチが 聴こえるため、音作りに独特の作法を必要としていた。 <RingMod_1.gif> <RingMod_2 lin.gif> <RingMod_3 lin.gif> <RingMod_4 lin.gif> を参照  もちろん波形も特徴的で、慣れれば波形を見るだけで判別可能だ。 <RingMod_WF_1.gif> <RingMod_WF_2.gif> <RingMod_WF_3.gif> を参照  聴覚的印象も特徴的で、適切にキャリア周波数を選ぶと、スペクトラムの高低が 反転した独特の音が得られる。つまり上昇スケールは下降スケールに、下降は上昇の ように聴こえる不思議なサウンドである。  またキャリア周波数を高めにとると、もともとの音声入力の帯域を高域に押し上げ ることも可能だ。  回路が簡単なので作ってみたことがある方もあるかもしれないが、実機ではバラン ス調整が微妙で、キャリアや音声が漏れてしまうことも多く手を焼くが、論理マシン であるAudacityでの作業では、そのような厄介な問題は皆無だ。 <RingModulator circuit.gif 回路図例を参照>    通信技術として考案された変調なので、復調すること(元に戻す)も可能で、復調 するには、使用したキャリアとほんの少しずれたキャリアを用意し(同一の周波数で は復調できない場合もある)、同じリングモジュレータを通すことで実現できる。 変調・復調の方法  Audacityでリング変調・復調をするには、LDASPAプラグインズをインストールする 必要がある。インストールはLADSPAインストーラーパッケージ(LADSPA_plugins-win -0.4.15.exe)をダブルクリックし、audacityのあるフォルダのPlug-Insフォルダ にインストールすればよいのだが、Plug-Insフォルダを指定すると、その中にさらに Plug-Insフォルダが作成されaudacityが認識できなくなるので、その上の階層の Audacity 1.3 Beta (Unicode)フォルダを指定する。  変調系のプラグインを使用するには、特有の作法がある。ボコーダーなどでも 同様であるが、変調をかける音声信号と変調信号であるキャリアをそれぞれ上下に なるようにトラックを並べ、「ステレオトラックの作成」(トラック左側のプルダウ ンメニュー)で、ステレオ化し、その後で「エフェクト」→「RingMod with two inputs」などを実行する。 <RingMod_tr_1.gif> <RingMod_tr_2.gif> <RingMod_tr_3.gif> 「RingMod with two inputs」には唯一のパラメーターがあるが、単純に言えば「変 調の深さ」で、参考図表にあるAM変調は、およそ「1.3」程度、リング変調は「2」だ が、このパラメーター(とくにAM変調)は図としてわかりやすくするため、やや深め に設定してある。実際に変調音として使用するためには効果を確かめ、変調の深さを 決定する必要がある。正しいリング変調は「2」の位置のみだが、変調音として使用す るには最適値はそれ以下の場合もあるので確認のこと。  リング変調はLADSPAには2種類あり、上記以外に「RingMod with LFO」という名称 のものもあるが、こちらはキャリア用のオシレータを内蔵しているので、キャリア 信号を用意しなくても、モノ・トラックのままでも処理できる。しかし、キャリアと して用意できる周波数の幅が狭く、特定の用途以外には使用しにくい。 (電子音楽などでは、キャリアにも一定の振幅、一定の周波数の信号以外のものを 使用することが多い・・・例えば声にピアノとか、ピアノにピアノなど) RingMod with LFO の等価回路 ┌────┐ 音声信号入力──┤Ring ├──出力 (被変調音) │modulate│ ┌──────┐└──┬─┘ │キャリア信号├───┘ │オシレーター│ └──────┘