ノイズの除去(ノイズの除去とクリックノイズの除去)                         (C)Y.Utsunomia 2008-2010 ○ノイズの除去  この「効果」は他の効果と異なり、2つのステップを必要とする。(特有の作法を 理解しなければならない) 一般的なノイズ除去の仕組みは、そのデザイナーの考える「ノイズ」について、デザイ ナーはその「ノイズ」の性質について観察し、聴覚的に巧妙にそのノイズだけを除去し ようと試みる。  しかし使用者の考えるノイズは多岐にわたり、ある者は「シャーッ」というバンドノ イズを、別の者は「ブーン」という商用電源に起因する信号を、またある者は「プチッ」 という突発的なポップノイズをいう。  筆者は本業の音楽制作者の立場で「S/N比」という概念を拡張し、「シグナル」とは その利用者が必要とする信号を、「ノイズ」とはその利用者が不要とする信号を指すと 嘯いているが、現実の問題として、何が必要で、何が不要かを識別することは「表現」 において大変重要で、かつ難しい。  逆に考えるならノイズとはそれほどに幅の広いものであり、また人によって食い違う ものなのである。  audacityの標準装備効果の「ノイズの除去」は学習タイプの「効果」で、最初のステ ップで使用者は自分の考える「ノイズ」とはこういうものだ、ということを学ばせ、そ れを除去するフィルターを設定し、次に使用者はそのフィルターを適用する範囲を指定 (選択)し、適用実行する。  「ノイズの除去」が学習し適用できるのは定常的なノイズで、しかもスペクトルが一 定しているものに限られる。つまり内部的には、最初の学習のステップで、ノイズを FFTでスペクトラム分析し、そのスペクトラムの逆カーブをつくりフィルターとしてい る。つまりイコライゼーションの自動設定のようなものなのであるが、違いは、そのノ イズが無いときには自動的にそのイコライゼーションも作用しないことである。  効果が高いのは電源起因の「ブーッ」や、クロックやクロック干渉による「キーン」 ノイズで「シャー」や「プチッ」には効果的ではない。「シャー」は広い帯域をもって いるためこれを削り落としてしまうと、必要な音も失いかねない(うまく設定すればそ れなりの効果があるが・・)ことや、「プチッ」は突発的ノイズで、やはり広い帯域を 持っているため、必要な音に対する影響が大きいことがあげられる。 (「プチッ」ノイズに対しては別の効果「クリックノイズの除去」が効果的 ☆ 学習ステップ(ノイズ・プロファイリング)  的確に目的のノイズだけがある部分を選び出す必要がある。できるだけ「必要な音」 のない、ノイズだけが浮かび上がっている場所を見つける。必ずしも適用する音のトラ ックから選ばなくてはならないわけではなく、異なるトラックであってもかまわない。 現場収録の場合、後からこの効果を用いる目的で、ノイズ源がはっきりしている場合、 そのノイズを「S/N比よく」収録しておくことも効果的である。 ☆ 適用ステップ  適用は、基本的にイコライゼーションと同様(ただし目的の「ノイズ」が無いところ では無効果)なので(学習結果のイコライゼーション表示がほしいところ)あるが、適 用されているところではそれなりに「必要な音」にも変化があるので、闇雲に全体に適 用しないほうが好結果となるだろう。 ○スムージング周波数とは、ノイズのスペクトラムが学習上は「輝線」(ナローバンド) であっても、適用するときにはバンドを広げ、ノイズが多少変動しても効果が得られる ようにするためのスライダーである。専門的には、スライダーを左にしてこの設定周波 数を狭くするとノッチフィルターのQは上がり、減衰量も増えるようだ。逆にスライダー を右に動かすとノッチフィルターのQが下がり、同時に減衰量も減るようである。したが って、効果があるならできるだけこのスライダーは左で使用したいものである。しかし ノイズの抑制とは心理的な要素もあり、ある程度パラメータを変更しながら最適値を 探るべきだ。(一度プロファイリングしたデータは、Audacityのその起動回の間は保持 されるようだ。