拡張wavファイルについて       最終改訂2011_11_23                         (C)Y.Utsunomia 2008-2010 一言wav形式のファイルといっても、様々な形式があることは「書き出し」に関する選択 設定の画面を一覧しても容易に理解できる。これはwav形式の自由裁量、あるいは柔軟性 の高さを表してはいるが、半面そのローカルルールがいつ、どこで使われ始めたものな のか判然としないこともある。つまり、基本仕様はマイクロソフトによって策定されて いるのだが、細かい仕様については規格の問合せ先すらわからないこともよくある。  興味があるなら、バイナリ・エディタなどを用いて、ヘッダーを覗いてみるのもおも しろいものだ。  従来あまり聴きなれなかったwavファイルとしてBWFや多チャンネル仕様のwavがある が、それらの特徴を理解し、効果的に利用すると、旧来は困難であった作業がいとも簡 単に実現できたりする。(BWFに関してaudacityは読み込みのみ半対応・=ヘッダー無 視) **BWFのヘッダーに記述されたマークや様々な情報は、Audacityでは読み飛ばし対応し  ているがWaveSpectra 1.50に搭載されたWaveファイル情報ウィンド表示機能(設定  →Wave→Waveファイル情報ウィンド)から情報を取り出しラベル情報に手動変換する  ことで、利用可能となった。 audacity ver,1.3.xには、拡張部分として「メタ・データの作成」と「カスタム・ミッ クスの使用」の設定がある。 これらは「編集」→「設定」→「読み込みと書き出し」に分類され、チェックマークを つけるだけで使用可能となる。メタ・データとは添付タグの一種で、アーティスト名、 トラック名、アルバム名、トラックナンバー、日付、ジャンル、コメントなどをファイ ルヘッダーに書き込みや編集ができる機能を指す。  利用としては、著作権表示に使用するもよし、分類や説明文を書き込むもよしである が、当然ヘッダーサイズは大型化し、場合によっては旧来のアプリケーションで開かな くなる可能性もあるため、互換性を確認のうえ使用する必要がある。 「カスタムミックス」について 「ファイルの開閉」の項でも触れたが、「カスタムミックスの使用」にチェックマーク をつけると、書き出し時(ファイルアウト時)に設定画面が現れる。 設定画面の操作は簡単で、左側にあるaudacityの各トラックを、右側にある書き出し トラックのどこに配置するか、を入力するだけである。左側と右側のトラックが線で結 ばれているが、これをそれぞれのトラック上にカーソルを持って行き、ドラッグアンド ドロップすると「配線」を変更することができる。  また初期画面では、左側のトラック数と同数の書き出しトラックしか用意されていな いが、画面下のスライダーを右に移動すると、最大32トラックの書き出しが可能とな る。  ここで着目すべきことは、単に複数のファイルが一体化して出力されるのではなく、 wavファイルの基本形式に従い、(6トラックの場合) | hedder |ch1-1・ch2-1・ch3-1・ch4-1・ch5-1・ch6-1・ch1-2・ch2-2・ch3-2・ch4-2 ・ch5-2・ch6-2・ch1-3・ch2-3・ch3-3・ch4-3・ch5-3・ch6-3・・・・・・|  のように、各トラックが市松模様に交互に順番に並べられ、一体化されていることだ。 各トラックを普通にそれぞれファイル出力すると、 | hedder |ch1-1・ch1-2・ch1-3・ch1-4・ch1-5・ch1-6・・・・・| の一塊に続き | hedder |ch2-1・ch2-2・ch2-3・ch2-4・ch2-5・ch2-6・・・・・| で一塊 | hedder |ch3-1・ch3-2・ch3-3・ch3-4・ch3-5・ch3-6・・・・・| 一塊 | hedder |ch4-1・ch4-2・ch4-3・ch4-4・ch4-5・ch4-6・・・・・| 続いて | hedder |ch5-1・ch5-2・ch5-3・ch5-4・ch5-5・ch5-6・・・・・| あとひとつ | hedder |ch6-1・ch6-2・ch6-3・ch6-4・ch6-5・ch6-6・・・・・|  のようにトラックそれぞれが順に整列する。 一見合理的に見えるのだが、これらの全トラックを再生しようとすると、それぞれのト ラックを端から順番に、交互に読み込んでいかなければならない。ハードディスクの 場合なら、ヘッドはジャンプ、ジャンプ、ジャンプ、ジャンプ、ジャンプ・・・。  で、あまりに大変なので(発熱は増し、寿命も短くなる)、一般的なDAWではPCに搭載 のメモリーにモノを言わせ、一定量ずつ(数十KBから数MB)ブロックで読み込み、 途切れないように再生する。(メモリーに読み込むのは、メモリーの読み書き速度が ハードディスクに比べ、桁違いに早いからで、それゆえ多くのDAWでは必要メモリーが 大容量な傾向がある。  これに対してaudacity ではver,1.3.xで150MB程度、ver,1.2.xではわずか30MB程度 なので、アクセスが追いつかなくなってくると、すぐに異常再生となってしまうのだ。  上記の市松模様ファイルではどうだろう。OSによる断片化が進んでいなければ、まる でアナログ・レコードのように、順番に読み込んでいくだけで、すべてのトラックが 均等に同量ずつ読み込まれていく。理論的には(7200rpm/24bit/48kHzfs)で50トラック 程度はバッファ10MBで読み書き可能なようだ。しかし、これはファイルのこのレイアウ トに限る話なので、少しでも読み書きすると事情は変化する。  少なくとも再生専用ファイルとしては価値がありそうだ。  このような市松模様ファイルに着目したシステムが、Alesis社 HD24に搭載のFSTで ある。実際には1サンプル単位ではなく、セクター(512B)単位で、しかも非断片化OS で動作している。また、FSTをエミュレーションするHD24 toolsというソフト(シェア ウェアだが、無料試用できる)では、PCベースでこれを実現しようというものだ。 最終的目標はHD24の全機能のエミュレーションらしいが、現在再生とサルベージの機能 (録音中の電源断や、何らかの原因で生じた、クラッシュドライブからデータをサル ベージする機能)が充実しているが、録音機能は不安定のようだ。 筆者はaudacityとHD24tools、あるいはFSTドライブが直結同時使用できれば理想的と 考えるのだが矛盾が大きい。