各トラックのメニュー                         (C)Y.Utsunomia 2008-2010  audacityを起動し、ファイルをドロップすると(あるいはaudacityをショートカット アイコンで起動している場合は、ショートカットにファイルをドロップするだけで起動 と読み込みができるので、フラッシュ・メモリー・レコーダーなどの録音物の整音専用 で使用する場合は便利。しかし、MTR的に大量のファイルを同時にドロップすると、ど のような順番で並ぶかの規則性が一定しないため、注意)読み込み可能なファイルであ れば読み込まれ、トラックが表示される。  ver,1.3.5まではプログレス・バーが表示され進捗状況が表示される(短いファイル では表示なし)が、ver,1.3.6以降では波形表示窓全体がプログレス・バー表示になる。 この変更により一部のハード(ドライバ?)によっては、読み込みが終了しても波形表 示に切り替わらないバグがあるようだが、波形時間軸を拡大/縮小することで正常表示 になるようだ。拡大しすぎて縮小でズームサイズを戻すのが面倒な場合は、4つあるズ ームボタンの右端のボタンの一押しでフルサイズに戻すことができる。それでも改善で きない場合は、ver,1.3.5以前を使用する。(トラブルシューティングに他の処方も掲載 )  トラックが表示され、その左端にあるパネルがトラックステータスとプルダウンメニ ューである。左上から  X(削除)、編集テーブルからの削除であり、ファイルには無影響であり、またUNDO可  トラック名とプルダウンマーク、 次段   トラックの形態(Mono、L、R 注1)、  トラックサンプリング周波数、  取り扱いビット深度 注2)、  Mute/Soloボタン、 次段  トラックレベル、  PAN  トラック幅短縮ボタン が表示されている。 ○ 削除ボタンをクリックすると、トラックが削除されるが、内部的には不可視かつ不  活性になるだけで、UNDOによって瞬時に回復する。この仕組みを利用すると、プレゼ  ンテーションなどで便利に使用できるが、理解せずうかつに次々に巨大ファイルを読  み込みなおすと、やがてテンポラリ・ファイルが肥大し、ハードディスクの残量が無  くなるとにっちもさっちもいかなくなるので注意する。削除ボタンをクリックしても  システムはデータを温存したままなので、仕切り直しをする場合には、必要データを  保存あるいはメモし、一旦audacityを「いいえ」で終了する。  無論、この削除はファイルそのものには何の影響も与えない。 ○ トラックネームとプルダウンマーク  トラックの名称は読み込みファイルの名称がそのまま表示されるが、表示スペースの  問題から、英数半角8文字でまとめると表示枠に収まるし、HD24などとの連携でも都  合が良い。   プルダウンメニューの逆三角を左クリックするとメニューが表示される。説明と注  意点は後述。 ○ トラックの形態表示  Mono以外はすべてステレオ・トラック扱い。「左」や「右」は表示の上では単独のト  ラックに見えるが、概念上はステレオの「左」チャンネルや「右」チャンネルで、  「左」や「右」トラックを「複数ファイルの書き出し」でファイル出力するとそれぞ  れがステレオトラックで出力される。それぞれのMonoトラック(多くのDAWソフトや  HD24でインポートするための)が必要な場合は、書き出す前に必ずこの表示を確認す  る必要がある。 ○ トラック・サンプリング周波数表示  ファイル読み込みの場合は、そのファイルヘッダに書かれているサンプリング周波数  がセットされる。「ファイルの開閉」、「サンプリング周波数」でも記述したが、  audacityは異なるサンプリング周波数の複数のファイルを読み込み同時に再生したり  加工したりすることができる。したがって、並んだ各トラックこの表示がまちまちで  あっても、実質的には作業をそのまま続行できる。(変更可・・下記参照) 重要)正確に説明するなら、音声ファイルはその録音形式についての情報(ヘッダーと  呼ばれる)と、音声データ列から成り立っており、このヘッダー情報の中にサンプリ  ング周波数の記述がある。その音声データ列をどのような速さで再生するかは、ヘッ  ダーのみで決まる。  このサンプリング周波数はアナログテープ録音で言うなら、テープ速度に相当し、し  たがってこのサンプリング周波数の表示は、そのまま「再生速度」と置き換えること  ができる。   トラック・プルダウンメニューの中に、各トラックのサンプリング周波数を設定す  る項目(設定範囲は任意!)があるが、これを変更すると、(元が48kHzで変更後が  96kHzとするとテープ速度は2倍になり、再生時間は半分、音程は2倍になる)容易に  トラック単位でテープ速度を変更できる。変更自体は単に読み出し方(再生速度)が  違うだけなので、無損失であるが、再生時にプロジェクトのサンプリング周波数と異  なる値のトラックは、リアルタイムリサンプル処理しながら再生される。(多少劣化  した音になるかもしれない。) 重要)画面左下にあるプロジェクトのサンプリング周波数の設定・表示、編集→設定→  品質にあるプロジェクトのサンプリング周波数の設定・表示とは、意味も機能も全く  違うので、よく理解していない場合は、このテキストを熟読し正しく把握すること。 ○ ビット深度表示  この表示は読み込まれたファイルの情報ではなく、読み込まれたファイルがaudacity  内部でどのようなビット深度の扱いを受けているか、という表示である。(audacity  が作成する一時ファイルのビット深度とも言える)この数値が大きいほど高品位な扱  いということになるが、当然マシンパワーを要求する。 (audacityにおいてマシンパワーの消費が深刻な問題をおよぼすのは、だれもが最も普  通に使用する「再生」においてである。このことが音楽制作用として不人気の原因に  なっているようだ。録音・再生以外においてマシンパワーが不足することで起こる問  題はほとんど見られない。処理に時間がかかるだけだ。)  が、同時に開くトラック数が10以下の時には全く気にすることは無いだろう。   このトラックのビット深度を変更するには、ファイル「読み込み前」に編集→設定  →品質で、プロジェクトのビット深度を設定しておくか、「読み込み後」ならトラッ  ク・プルダウン・メニューから「サンプルフォーマットを設定」で変更する。差分抽  出などの測定用途で用いる場合は必ずファイル読み込み前にプロジェクトのビット深  度を設定しておく。(ディザもoffに) ○ Mute/Soloボタン(リアルタイム操作可)  とくに説明の必要は無いと思うが、MuteはMuteしたトラックを「消音」する機能で、  再生中にも作動できる。しかしMuteしても内部的には再生したままなので、マシン負  荷が軽減されるわけではなく、多くのトラックを再生中に「ひきつる」からといって  Muteしてもさらにひきつりがひどくなることすらある。   Soloは、あるトラックをSoloにすると、そのトラック以外のトラックすべてが消音  される機能で、このあたりを眺めるとDAW的だ。 注意)このMute/Soloボタンは再生時の一時的機能で、ファイル書き出しや「ミックスし  て書き出しには反映あるいは影響を与えない。 ○ トラック・レベル(リアルタイム操作可)  このスライダーは±36dBの範囲で、まるでフェーダーのように操作できるのであるが、  audacityではこのフェーダーに相当する機能は「エンベロープ・ツール」であり、そ  れとは独立に機能する。考えようによっては機能的なのだが、このフェーダーはあく  までトラックの利得係数(増幅度、レベル調整はすべて掛け算命令なので、利得設定  やフェーダー機能は内部的に集計され一つの係数として扱われる。)のようである。  せめてこの操作を記録し、エンベロープツール渡せれば相当使いやすくなるのだが・。   このトラックレベルはエンベロープツールよりも優先度が高く、エンベロープツー  ルを設定後、「ミックスして作成」などを実行したときに、全体としてはクリップな  どが発生してしまう場合、このスライダーで全体にレベルを下げれば対処できる。現  在の設定値から全トラック連動させる「マスターフェーダー」があればとても便利な  のだが、ver,1.4.x系には搭載されることを祈ろう。   いくつかの有名DAWソフトでは、それぞれのトラックのレベルが高すぎる場合、ど  うやっても(内部バス的に)クリップが避けられない(各トラックをレベルを下げ、  レンダリングすれば問題なくなるが)ものがあるが、audacityはこのスライダーのお  かげでレンダリングする必要もなく大変作業がしやすい。 参考)このトラックレベルのツマミを左クリックすると、現在の正確なゲインが表示さ   れる。数値が表示されることは重要で、複数のトラックに同じセッティングを行っ   たり「再現性」を求める場合、必須の要件となる。    さらに、このツマミを左ダブルクリック(ver,1.3.x系)すると詳細設定画面が   現われ、よりストロークの大きいスライダーと数値入力窓が使用できるようになる。    このスライダーはどちらも2倍にエクスパンドされたストロークを持ち、実際に   見える長さよりも操作しやすい(指を離さなければ・・)。 重要)このトラックレベルは再生時のみの一時的なものではなく、「ミックスして作成」、   「ファイルの書き出し」などのすべてで有効である。ただし効果などの結果、クリ   ップが発生すことは抑制できない。(つまり効果の方が先、あるいは優先と考える) ○ PAN(リアルタイム操作可)   トラック・レベルのスライダーと同様のふるまい。なので、前記の「参考」「重要」  を参照。 ○ トラック幅短縮ボタン(リアルタイム操作可)  トラックはそれぞれ下端をつまんで上下に調整すると、トラックの上下幅は自由に表  示変更できる。トラック幅短縮ボタンをクリックすると、一気にトラックを最小幅に  変更できる。    この機能は単に表示についてのもので、音や機能には影響を与えないが、操作部分  が隠れてしまうので、それぞれのトラックに設定する作業がしにくくなる。「ビュー」  →「全てのトラックの拡張」で、この短縮された表示は全てのトラックで元に戻る。   この機能でトラック幅を短縮すると、わずかに表示動作が軽くなる。                  *           *   * トラック・プルダウンメニュー  このプルダウンメニューには次のものがある。 ○ トラックの名前  トラックの名称と変更画面が表示される。 ○ トラックを上へ/下へ  そのままである。トラックの並べ替えに使用する。しかしver,1.3.xでは、直接トラッ  クの左、ステータス部分をつまんで(左クリックしながら)ドラッグすると同様に並  べ替えができるので、おそらくはその方が便利であろう。 ○ 次の枠はトラックの表示タイプ  この表示タイプは「編集」→「設定」→「インターフェース」で、デフォルトを設定  できる。  通常は「波形」でよいだろう。 ☆ 波形  お馴染みの波形そのままの表示。 ☆ 波形(dB)  波形ではあるが振幅方向に対数圧縮された波形。波形の形を見るには不便だが、単な  る波形はリニア表示なのでレベルを見るには多少不便だが、対数圧縮された波形はレ  ベルを読み取るには大変都合がよい。 重要)   表示は中央線が−∞で、最大値が0dBである。「中央線に最も近い数値」は表示最  小設定(「編集」→「設定」→「インターフェース」の「波形(dB)表示における表示  範囲の最小)で設定できる。この設定は単に表示範囲の最適化のためのものではなく、  エンベロープツールの最小値の設定にもなっている。 **音響操作用のフェーダーはそのほとんどが対数目盛りを基にしており、エンベロー  プツールで書き込む際、リニア波形画面よりも対数圧縮波形画面の方が聴覚特性に近  く、操作が圧倒的に楽になる。このとき上記の「〜表示範囲の最小」を設定すると、  その最小レベルを持つフェーダーを用意したことになる。つまりフェーダー制御特性  のカスタマイズが可能なのである! ☆ スペクトログラム(リニア)  声紋分析などでおなじみの、Y軸=周波数、X軸=時間、色(または明るさ)=エネル  ギー、の表示であるが、このモードはY軸=周波数スケールがリニアなタイプ。   audacityはポップス専用ではないので、特徴的スペクトラムの出現時間を見つけた  り、そこから抽出したりする用途には便利と思われる。この表示はFFTベースで作成さ  れているので、そのFFTの設定や表示レンジの設定が「編集」→「設定」→「スペクト  ログラム」にある。   本テキストは分析については最小限しか触れないので、詳細は専門書に譲る。 参考)  より高精度で「美しい」分析結果が見たい場合は「その他の有用なソフト」に紹介し  たfftwsg.exeなどを参照。 !! これらスペクトログラム系の表示は非常に重く、長時間のファイルを解析させた  り、ズームインを多用するとハングアップしそうなほど鈍重な動きになる。そのよう  になっても実際にはハングアップすることはほとんどないが、使用者があわてて闇雲  に閉じようとしたりすると不正終了することもよくある。気長に待ちたいものだ。ま  た分析が目的なら、必要部分を切り出しその部分について作業するべき。 ☆ 対数スペクトログラム  上記のスペクトログラムと同じであるが、Y軸=周波数スケールが対数(オクターブが  等間隔に表示される)であるため、音楽などには適するかもしれない。 ☆ ピッチ(EAC)   ピッチ抽出表示。スペクトログラム表示と違いは、アルゴリズムとして倍音抑制を行  い、基本波エンハンス表示を行うものである。この分野にはいくつかのアルゴリズム  があり、抽出成績や対応素材タイプもまちまちである。   ピッチ抽出表示はそのことに特化したソフトがそれなりに優秀なので、そちらを参  照いただきたい。pmonitor.exe wavetone.exeを参照。 ☆ トラックタイプ  そのトラックの扱いを「Mono」とするか、ステレオの「左」とするか、同「右」とす  るかの選択。書き出した際に「Mono」になるのは、「Mono」の設定のときだけなので  注意。「左」や「右」は、「ステレオトラック」の左や右になる。 ☆ ステレオトラックの作製  プルダウンメニューを開いたトラックと、その下にあるトラックを「ステレオ」扱い  にする。ステレオトラックにするとほとんどのコマンドが、2つのトラックで連動す  るようになり、ステレオペアの必要があるトラックについては、早いうちにステレオ  化すると良いだろう。   上にあったトラックがステレオの左に、下のトラックがステレオの右としてステレ  オ化される。筆者の希望としては2つのトラックだけでなく、いくつでもグループ化し  連動して操作できればと思うが、とりあえず効果などで同時指定したい場合は、Ctrl  を押さえながら、希望トラックを複数選び、その後効果を実行することで連動あるい  は操作簡略することができる。    注意)  元がMonoトラック2つであっても、一度ステレオ化すると、その後ステレオトラック  を分離しても、Monoトラック2つにはならない。それぞれステレオの「左」と「右」  のタイプとなる。(上記参照) 参考)  もし2つのトラックが異なるサンプリング周波数の場合は、上段のサンプリング周波  数に一元化される。 ☆ ステレオトラックの分離  ペアマイクによるステレオ録音(フラッシュメモリー・レコーダではほとんどがその  タイプ)などで、うまくセンターが出ていなかったとする。その原因はマイクロホン  の感度のばらつき(これはよくある)から、止むを得ない事情や技量の不足で、音源  に対してマイクロホンが正しくシンメトリにセットされていない、など・・・稀にレ  コーダーの設計上の不備で両チャンネル間に時差があるなど・・様々であるが、  audacityはこれらに対して有効な補正ができる。   マイク感度のばらつきであるなら、感度の低いトラックを増幅するか、高いトラッ  クを減衰、時差がある場合は、タイムシフトツールで、進んでいるトラックを遅らせ  れば良い。もちろんこれらは自動で行えるわけではなく、操作者の分析能力と知識が  必要になるのだが、この問題に対して適切な処理ができるソフトは少ない。  多くのソフトでは、よくできたものでも時間軸の最小分解能1サンプルだが、audacity  の場合自由にサンプリング周波数が設定できるため、(リサンプルと組み合わせる必  要があるが)例えばサンプリング周波数が48kHzであってもアップコンバートし192kHz  で作業を行うことで、1/4サンプル精度に最小分解能を上げることができる。しかし  リサンプルは必ず損失を伴うので、その損失を犯してまでやる作業かどうかは慎重に  検証すべき。(リサンプルを行う場合は2のN乗の比率にするとやや低損失になるが)  また、マイクの感度は固有なので、それぞれについて感度差を数値化しておけば、容  易に補正作業を実行できる。   このような一連の作業を行おうとすると、ペア組みされたステレオトラックを一旦  分離する必要がある。そのようなときにこのコマンドは使用されるが、補正の必要が  ない場合にはせっかくのペアを無闇に分離すべきではない。操作するのは人間だから  だ。 ★ ステレオからモノラルへ(ver,1.3.8以降)  上記ステレオトラックの分離と似ているが、ステレオトラックの分離では、分離後の  トラックはモノトラック2本のように表示される。しかし実際には「PAN属性」のよう  な概念がAudacityにはあり、その属性がそれぞれLとRになり、それらのトラックを単  独で書き出しても、ステレオトラックのLのみ(またはRのみ)が作成される。正しく  モノトラックとして書き出すためには、もう一度そのトラックのメニューを開き、  「MONO」を指定しなければならない。  この新しく加わった「ステレオからモノラルへ」を実行すると、最初からモノトラック  2本に分離される。   この機能は単にステレオトラックをモノ2本に加工することが目的ではないようで、  モノ・モニターの機能を兼用しているようだ。(「バランスとミキシングの心得」の  項を参照)なぜなら、再生しながらリアルタイムに操作することができるからだ。  ただし、再生しながらモノに切り替えると約+6dBレベルが上昇するので、出力の飽和  に注意する。対応するには、そのトラックのトラックゲイン・スライダーを6dB下げ  る。 ☆ サンプルフォーマットの設定   ビット深度の設定。「ビット深度とディザ」とこの項の冒頭を参照。  (候補から選択) ☆ レートをセット  そのトラックのサンプリング周波数の設定。「サンプリング周波数」とこの項の冒頭  を参照。    (候補からの選択と、任意設定が可能:その他をクリックするとサンプリング周波数  の入力画面現れる)  この数値を変更すると、リサンプルではなく「テープ速度」(=ピッチと速度の両方)  が変化する。変更そのものは無損失。